
それっぽい名前を付けただけです
クラゲの融点
深夜は眠るに限ること
「君は幽体離脱を経験したことがあるだろうか。ああ、突然呼び止めてしまってすまない。別にオカルトの話をしようっていうわけじゃないんだ。なんなら幽体離脱なんかどうでもいい。別に君でなくたっていい。ただ、現実ではありえないとされている事が、実際に起こっているのならば、僕はそれを知らずにいるのは嫌だと思っている。だから今、君にこうして質問をしているわけだ。大丈夫、安心して答えて欲しい。もししていたとしても、どこかの研究所につき出すなんてことはしない。ああでも詳しい話は聞きたいな。それくらいの好奇心は許してほしい。別にその道に精通しているわけじゃないから、ただただ僕の知識欲を満たすだけになっちゃうけどさ。ああいけないいけない、話が長くなってしまった。最初の質問を忘れてしまっているかもしれないから、いや君を馬鹿にしているわけではなく、一応安全策をと思ってね? なのでもう一度問うね。君は幽体離脱を経験したことはあるだろうか?」
「いや、やばい人じゃん?!?!」
「え」
しまった声にでてた! あまりのやばさに身体が拒否反応を起こして脊髄反射で返事をしてた! いやだってやばすぎるでしょ! こんな夜中に女の子がひとりで立ってるなんて、大丈夫なのかな〜とは思ったけど、こんな大丈夫じゃないなんてことある?! 初対面っていうか、偶然道ですれ違っただけの人間にここまでの負荷をかけてくる?! コミュ障とか気がふれてるとか、そんなレベルで済ましていい相手じゃないと思うんですけど! 触れるもの皆傷つけるナイフさんの方がまだマシだわ!
しかし、話しかけてきたのはナイフどころか、いかにも不審者な中年のおじさんなどでもない。SJKの私よりも幼い、小学校高学年くらいの見た目の、かわいい女の子だった。一瞬ほかの誰かが喋っていたのではないかとも思ったが、あたりは他に誰もいない。じゃあ何となく、ちょっと疲れてたとかなんかで、うっかり独り言を言ってしまったのかな~とも考えてみたが、女の子の目はまっすぐ私を見つめている。やっぱり、さっきのはこの女の子が、私に向けた言葉で間違いないのだろう。女の子はかわいらしく、私が近所に住むおばちゃんだったら、見かけるたびに飴ちゃんを差し出してしまっていただろう。だが私は男尊女卑も女尊男卑も許さない、正義の老若男女超越フェミニスト。相手が小さい女の子でも、怖いものは怖い。うるせ~! 知らね~! って言って今すぐ走って逃げだしたい。思い立ったが吉日! 今すぐやろう!
……と思いはしても、悲しいかな超気弱一般人自分。一応話しかけてきただけではある人間を無下にすることもできず、背中に流れる冷や汗に不快感を覚えつつも、相手をしてしまう。できるだけ目線を合わさないよう、顔を背けながら。
「その、幽体離脱、ですか?」
「そうだよ。一応と思い繰り返させてもらったけど、やはり正解だったのかな。まあ仕方ないね、知らない人間に話しかけられること自体に驚いて、聞き逃すこともあるだろうからね」
そこの理解があるなら話しかけないでほしかった。
「自分でできないかなって試してみたりはしたんだけど、やっぱりできなくて。これは自分だからなのか、調査しなくてはならないと思ったんだ。でもどうやら恥ずかしがり屋の人が多いみたいで。君の先に話しかけた5人はみんな、話しかけた時点で走って逃げていってしまったんだ。いやあ君は優しくて勇気がある子だね。ありがたい限りだ。で、君は幽体離脱を経験したことがあるだろうか?」
あったのは理解じゃなくて経験かあ。いつか警察呼ばれそう。なんならもう呼ばれてるかもしれない。私とすれ違う前にさっさとめげてほしかった。関わりあわず平和に平凡に今日を終えたかった。
しかし、そう言ってられる状況じゃないのは、むしろ私の方なのだ。平和に平凡な今日というものは、この子に出会う、つい10分前には消え去っているのだ。
こんなやばそうな人に相談とかしたくないけど、今は藁でもつかんでいかなければならない。不審者につかまるくらい、人型でラッキーと思うしかない!
「……私、幽体離脱したことあります。ていうか、今ちょうどそれで悩んでます。話を聞かせるかわりに、助けてはくれませんか」
大喜びで快諾されるかと思ったらそうでもなかった。
「え、ええ〜……? 話は聞きたいけど助けられるかって言ったらわからないな……僕、嘘はつきたくないんだよね。助けられるよう尽力はするけど、助けられなくても怒らないでくれるかい?それでもいいなら、話を聞かせて欲しいな」
とまあ、わりかし一般人みたいな反応をされたので、自分の方がやばい人みたいになってしまった。私は必死なだけだというのに!
けど、その条件を飲まないわけにもいかず。私だって、その辺にいる人が幽体離脱の治し方を知ってたら怖いとは思うし……。
「証拠とかはないのかい? あんまり怪しみたいわけじゃないけど、一応ね」
常識的な質問をするな。わかるけど。
「証拠って、どうしたら見せられますかね」
「なぁに、難しく考える必要は無いよ。君は今、自分が幽体離脱している、と思っているんだろう? ならばそう思った原因を提示すればいいんだよ」
私は面白味のない一般人なので、その通りである。幽体離脱〜!wって言って、自ら霊体で起き上がったりなどはしていない。つまり?
「君の本体のある場所に案内してくれ」
やだ……。
嫌とか言ってられる状況ではない。ということで私は夜中にもかかわらず小学生を家に招く女子高生になったのだ。
女の子は「おじゃましま〜す」なんて小声で言いながら、靴をぽいぽいっと脱ぎ捨てた。礼儀がなっているのかなっていないのか、よくわからない。夜中に見ず知らずの小学生をお家に呼んでる時点で、私はもうアウトなんだけどさ。
「入っといてなんだけど、ご家族の方もいるんだよね? いきなり知らない人を入れても大丈夫?」
だから常識的な疑問をもつんじゃない。現状は非常識なんだぞ。
「まあ、もう寝てますし……大声は出さないでいただければ大丈夫です」
「眠りが深いんだね」
返しに困るコメントをするな。
「この階段を上がって正面の部屋が、私の部屋です」
「ありがとう、入るね」
女の子はできるだけ音を立てないように歩きつつも、躊躇はせず部屋の中へと進んだ。
私の部屋は私とおそろいで、いたって普通の部屋である。入ってまっすぐの向きに学習机、左側に箪笥と本棚、そして、右側にベッドが置いてある。
「君、一応聞くけど、双子とかじゃないよね?」
「それはないはず、なんですけどね」
ベッドの上には、私とうり二つの…というか、どう見ても私と同じ人間が横になってすうすうと寝息を立てていた。
同じ人間ってなんだよ。日本語の崩壊。どうやらこの国の言葉は、この状態を想定してつくられてはいなかったらしい。そりゃ想定するわけないんだけどさ。
「まあそんな仕込みの必要な嘘を、偶然出会っただけの僕につくメリットなんてないもんね」
当然だ。誰だお前。普通に正論なのにびっくりしてお口が悪くなっちゃった!
「となると……君はやっぱり、幽体離脱してるってことになるのかな。でも、おかしいな……」
女の子は真面目な顔のまま、黙ってしまった。もう一人の私を見つめながら。
何を考えているんですか、と聞こうとしたその時。
本体のほうから、小さく物音がした。
「隠れられる場所!」
女の子の切羽詰まった声の指示で、私たちは急いで廊下に出て、自室の隣の物置部屋に逃げ込んだ。心臓を落ち着かせてから、ドアを薄く開き外を確認しつつ、事態の把握に努める。
「なんで物音が……?」
「わからない……待って、誰か来たよ」
慌てて息をひそめ、扉の向こうを盗み見る。現状、家の中に不審者が複数いるってこと? 非現実に非現実を重ねすぎでしょ?! 怖すぎない?!
しかし、現実はもっと予想外のものだった。私たちに気づくことなく目の前を過ぎていった人物は、さっきまで見ていた、パジャマ姿の私そのものだったのだ。
私は普段通りの足取りでトイレへ向かい、個室の中に消えた。
「いや私歩いとるやんけ!」
びっくりしてまあまあな大声出しちゃった! いやでも歩いてる! 歩いてるんですよ!
「やっぱり双子とかじゃない……?」
「違いますって!」
当然の疑いを持つんじゃない!
「でも、君がいるのに本体(仮)が動いてるってことは、幽体離脱じゃあないってこと……じゃないのかな。残念だけど」
確かに、それはそうだ。幽体離脱のプロとかじゃないからよくわかんないけど、そうなるとなんか、違う超常現象になるってこと……?
「生霊は生きている人間の強い思いから生まれる怨霊だから、正直、君は違うんじゃないかなって思うな。消去法的に、ドッペルゲンガー……だったりするんじゃないかなって」
人を特に何の強い思いもなく、のうのうと日々を過ごす暇人JK扱いするな。合ってる……。いやいやいや待ってくださいよ。
「本当にドッペルゲンガーだったら、私近いうちに死んじゃうんじゃないんですか?!」
ドッペルゲンガーの伝説だったら、さすがに聞いたことがある。中でも一番有名なのはやっぱりここだと思う。私はまだ死にたくない! けどもう見ちゃった!
「あ~、あとまあ、もしかしてね。本物っていうか、メインは君じゃなくて、実は向こうのほうなんじゃないかな?」
「え」
え? でも、そうか、完全に自分視点だったから出てこなかったけど、そういう可能性だってあるのか。えっあるの?! えっ待って待って、じゃあ私は何?
「不思議だなあって思ってたんだよ、こんな夜中に女の子が一人で制服姿で歩いてるなんて」
めちゃめちゃブーメラン発言もらった! けれど、言われて気が付いた。そうだ、なんで私は制 服を着ているんだ? なんで夜中に外を歩いてるんだ?
「それで連れてこられたお家では、パジャマ姿の同じ子が寝てるわけだし。こっちがベースなんじゃないかなあって考えてたら、普通に動いてたから、ああ、そうなのかなって」
そんな、私が、偽物……?
「じゃあ私、これからどうやって生きていけば……?」
外には同じ姿をした本物が歩いてる。私は学生という身分どころか、戸籍すらも持っていない。もう日向を歩いていきれなくたって、死にたいわけじゃない。地べたを這いつくばるほど生きたいわけじゃないけど、わざわざ死を選ぶほどじゃない。
「それなんだけどね」
女の子は、ひと呼吸間を置いた。会ってから初めてためらう姿を見た気がする。
「僕のお家に住まない? 結局君は幽体離脱していたわけじゃなかったけど、僕の目的は、現実ではありえないとされている事が、実際に起こっているのならば知りたいってことだったからね。だから僕は君に興味があるんだ。君も、他に行く当てはなさそうだからね。あと、ペットとか飼ってみたかったし。どうかな?」
「住む!」
絶望しかけた時は、不審者も聖人に見えるらしい。私は二つ返事で飛びついた。飛びついてから、人並みに存在する尊厳が少し顔を出してきた。
「女子小学生に養われるのか……」
「失礼だな。義務教育はもう終了しているよ。年で言えば、高校一年生だよ。高校には行ってないけどね」
ちっちゃいっていうか幼いっていうか、やばいひとだから、私より一つ年下なだけだとは思っていなかった。いや非現実的な状況で、そんなことにこだわるなって話ですけど。
「じゃあ普段、何をしているんですか?」
「脛かじって研究」
やってんな~!!! ちょっとじゃなく安心した! 私養う余裕あるんですか?
「もう数年したら研究の成果が億単位になるだろうから、そこまでの我慢って感じかな。あと、お家にもお金はたくさんあるし」
終了解散ばいばい! ただの富裕層の投資だなこれ。私養う余裕しかない。これはこれで安心! いやさすがにちょっとだけ良心が痛みますけど……。
「まあお金のことはいいけど。気になるようなら、ネットビジネスでも株でもなんでも、お家で何とか稼いでね。名義は貸すから」
現実的な解決手段! それならまあ……お金もなんとかなりますね……。
もう、訳が分からないほど流れが急、話が急。でも、現実は小説より奇なりっていうか。現実のほうが実は急展開だったりするって、学んじゃったから仕方ない。
「じゃあ、これからよろしく、かな?」
「まあ……よろしくお願いします」
よくわかんないままによくわかんないことが起きて、よくわかんないままによくわかんない人と一緒に住むことになった。でも人生ってよくわかんないものだから、これだって一つの正解なんだろう。まあ、よくわかんないけど!
今回は言い訳枠です。
言い訳いい?いいよ~~ありがとうございます。
リレー小説のあとがきにも書いた通り、個人小説のほうは印刷数時間前まで書いてたやつなんですよ。
出来がめちゃめちゃだよね。
これわけわかんなくないですか?!?!読みかえしてびっくりしちゃった。
小説書くとき、基本的に適当な流れを書いてから肉付けをするタイプなんですが、肉付けは前からしちゃうので……
だから間に合わなさ過ぎて最初のほうの肉もそぎ落としちゃった!
そしたらわけわかんなくなっちゃった!!!!ごめん ごめんなさいですよ 謝罪!!!!
反省はしてます……次の夏はもっと早くから書くね……
C94のときの自分すごかったよな、カラーイラストまで用意してさ。
すごい。すごいな自分。えらーい!(自分にあまあまヒューマン)
まあ正直夏は夏休みブーストあるから……うん……てへ
削ぎ落した肉の部分で女の子の見た目の部分あったから拾ってきたよ見て~~普段こんなんやんないから!!
女の子はロンングスカートにポンチョ、マフラー、手袋、ムートンブーツ、と寒い夜に外で長時間待機するための装備を、そろえて身に着けていている。
長めの髪の毛は上からマフラーでつぶされていて、飛び出してきてしまったのであろう髪が膨らんだ部分が、ふわっとしている。
全体的にももふもふしそうな丸いシルエットは幼い外見によく似合っていて、とてもかわいい。

ここまではお絵かきまでだす気だったんだろうなって気概を感じる。だめだったけど。
もともと肉付けそんな得意じゃないから、今度はあんまり自分でハードル上げすぎないようにします!
そしてこの文章も12月31に日に書いてるからマジで成長してないし!
自身の限界の見極め大事!!!
はい!ごめんなさい!反省!!おわり!!また来年!!!!
裏表紙の文字はたぬき油性マジックというフォントをお借りしました
かわいくて使いやすくて特徴的でめちゃ好き!